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狐龍の背から腹を貫く小刀。悲鳴を上げる狐龍。物の怪に実体はないため血飛沫が上がることはないが、師から受け継いだこの小刀なら、確かに傷つけることはできる。
『許さん……!!』
狐龍は飛び立つと、その羽根を使って突風を起こした。巻き上げられる炎。強力な風に思わず目を瞑った瞬間、鋭い爪が彼の横っ腹を切り裂いた。
地面に倒れる彼。爪が裂いた場所からは、どくどくと血が流れている。それを見下げる狐龍。彼は傷口を押さえながら歯を食い縛りふらりと立ち上がると、自分の周りに結界を張った。
「……仕方ないですねぇ………この術は使いたくなかったのですが…」
そう言って痛みを堪えながら、背筋を伸ばす。人差し指と中指を前に出し、魔法陣を描き出した。
これは彼の属する流派の中で、最も難しいとされる術。全神経と身体中の力を集中させ、呪文を唱える。その術を成功させるには、強い精神力と洗練された力が必要だった。
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