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しばらく砂浜を波打ち際に沿って歩いていると、洞窟を見つけた。今晩はここが宿か、と直感的に思った。捨てられたのか置いてあったのかもわからない呉座を見つけ、洞窟内に敷く。
日は落ち月明かりだけが頼りになった頃、横になっていた由江の耳に誰かの声が聞こえた。
「・・・おい、・・・か・・・」
「だ、・・・は・・・」
二人いるようだ。この洞窟の上の道からか?由江は耳を澄ませた。
「・・・や・・・の・・・」
「・・・うか・・・」
よく聞こえない。自分の呼吸音さえ耳障りで、息を殺しさらに聞き耳を立てる。
「・・・やは・・・の・・・が・・・」
「・・・もののけ・・・をな・・・」
「!」
今、物の怪と言った・・・?しかしやはり聞き取りづらく、由江はそっと洞窟から出た。少し顔を出して道を見てみると、農具を持った男と手ぶらの男が確認できた。
由江は洞窟から出ようとする──が、一瞬躊躇って陽菜を振り返った。陽菜は岩に腰掛け洞窟の壁を見つめていた。
「陽菜も、来るかい?」
すると、陽菜はスッと立ち上がった。由江は道に上がりやすい場所を見つけ道に出て、男たちを認めると垣根の影に身を隠した。
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