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「・・・しかし、そんなことあるかいな」
さっきよりかははっきりと聞こえる。
「樫宮様も、よう為さる。物の怪など、お伽噺ではないのか」
「それに、相手は子どもだろう?そんなに血眼にならんでも、すぐ捕まるさ」
「しかし、この村まで巻き込まれちゃたまったもんじゃないよなあ」
明らかに、由江たちのことだ。樫宮様は由江の村を治めている領主。やはり、もう樫宮様の耳に陽菜のことは届いてる──そして、私たちを血眼になって探しているんだ!!
「さあ、そろそろ帰るか」
「ああ、そうだな。トンチに襲われるかもしれないしな」
男たちは歩き出した。がははははっ、という豪快な笑い声が遠のいていく。由江は、金縛りにあったようにその場から動けなかった。しかし手だけは陽菜の手をいっそう強く握っていた。
「陽菜、大丈夫だよ・・・。陽菜は、私が守るから・・・・・・」
うわ言のように言う由江の顎には、汗が伝う。陽菜の瞳は、冷たく光るだけだった。
周りは真っ暗闇だ。
「・・・!・・・──!」
遠くで人の声が聞こえる。何を言っているのだろう。
「──!──い!・・・おいっ!!!」
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