第五章

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「・・・しかし、そんなことあるかいな」 さっきよりかははっきりと聞こえる。 「樫宮様も、よう為さる。物の怪など、お伽噺ではないのか」 「それに、相手は子どもだろう?そんなに血眼にならんでも、すぐ捕まるさ」 「しかし、この村まで巻き込まれちゃたまったもんじゃないよなあ」 明らかに、由江たちのことだ。樫宮様は由江の村を治めている領主。やはり、もう樫宮様の耳に陽菜のことは届いてる──そして、私たちを血眼になって探しているんだ!! 「さあ、そろそろ帰るか」 「ああ、そうだな。トンチに襲われるかもしれないしな」 男たちは歩き出した。がははははっ、という豪快な笑い声が遠のいていく。由江は、金縛りにあったようにその場から動けなかった。しかし手だけは陽菜の手をいっそう強く握っていた。 「陽菜、大丈夫だよ・・・。陽菜は、私が守るから・・・・・・」 うわ言のように言う由江の顎には、汗が伝う。陽菜の瞳は、冷たく光るだけだった。  周りは真っ暗闇だ。 「・・・!・・・──!」 遠くで人の声が聞こえる。何を言っているのだろう。 「──!──い!・・・おいっ!!!」
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