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はたと気がついて、由江は目を開けた。目の前には、あのガキ大将。
「なんでお前、こんなところで寝ているんだ」
由江は飛び起きて、自分が眠りの中でガキ大将の声を聞いていたことを知る。
「か、関係ないよ!」
由江は呉座を片付けながら言った。こんなところで野宿しているところを見られた恥ずかしさと、陽菜のことは話すまいとする頑固さが、由江の中でなんとも言えない心地悪さを生み出していた。
「なんだよ、お前の連れの子は可愛いのに」
ドキッと由江の心臓が激しく鳴る。由江は、
「そ、そうでしょ?こんな可愛い子は、あんたなんか相手にしないよ」
と返した。
「ちぇ、可愛くねえの」
そうガキ大将が舌打ちしたとき、
「喜助ぇ、何やってんだ?」
と声がかかった。3人ほどの少年が、釣具を持って洞窟を覗いていた。みんな日焼けをしていて、ガキ大将より2回りくらい華奢だ。
「なんだ、その女たちは?」
「なんでもねえ、行くぞ」
そう言って洞窟を離れるガキ大将。しかしその中の一人が、
「おめえ、この村のもんか?」
とやはり見たことない顔に興味を抱いたらしく、話かけてきた。まじまじと由江の顔を覗いてくる。どうやら、人同士の繋がりは深そうな村だ。
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