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「……お前は…何を考えている…」
「何って…依頼を受けただけだろ…」
「お前は自分の価値を分かっていない…」
低く、でもよく通った声が気持ち良くも感じる。そんな事を思っていたら、いつの間にか梦月櫻の顔が俺の間近にきていた。
「なっ……!」
そして、呆気なく俺の両手首を掴み頭上に固定される。
「何すんだ……」
「先程言ったはずだが…?柚姫…。お前は自分の価値を分かっていない…と。」
「は?……価値…?」
「お前は神凪の姫。いずれ巫女になる人間だ。そんなでかい存在が外を彷徨いてみろ…。神凪の香りに誘われてあらゆる妖が寄って来るぞ…?」
「そうなれば、お前で斬るだけだ。」
「言っている事を理解してないな、柚姫。神凪に魅了されるのは何も妖だけでは無い。人間ですらそれに誘われる。
この私であっても…そうだ。神凪に縛られているとしても、お前の…神凪の血の香りは甘く…美しく…酔わされる…。」
俺の耳元に口を近付け、そう囁く梦月櫻。なんか変な感じがして俺は咄嗟に目を瞑ってしまった。
「学園だと……?行ってどうするというのだ…」
「だ…から、言っただろ。依頼だって……。お前こそ、自分の用がある時しか出てこないくせに…一丁前に説教か…?ふざ…ッイテッ…!」
急に梦月櫻が手首を掴む手に力を強めたせいで、声を漏らしてしまった。
「おま……」
「お前は本当に…何も分かっていない…」
「………は?…」
「どうして私がお前を選んだのか…」
すると、梦月櫻はどこか儚げに瞳を揺らして俺の両手首から手を離した。
そして、そのまま刀に戻ろうとする。
「待て!梦月櫻!どういう意味だ…!俺を選んだワケって…」
叫んだ。でも、梦月櫻は俺の言葉を無視して刀に戻った。黒い空間もなくなって、元の空間になった。
なんだよ…あいつ。出てきたと思ったら意味深な事言いやがって…。
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