第壱章

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『あれが次期神凪の巫女か…。あんな美しい顔で男とは…』 『神凪の巫女が女ではなく男?信じられん。今まで女しか選ばれなかっただろう…』 『梦月櫻もどういう訳か…』 『にしても本当に美しい容姿だ。それに身に宿す力も強力。』 『ふむ……。まあ、今は様子見という事にしとくか…』 周りでヒソヒソと僕の話が交わされている。そんなに神凪の巫女が女でなく男であるのが不満か…? 小さい頃よくそんな事を思った。自分がどうして男なのか…どうして巫女として、選ばれたのか…。どうして………、 「………ん」 目を開くと見慣れた天井が現れた。古いけど歴史が感じられ、広くて豪華な日本古風の屋敷。敷地は……東京ドームより大きいって事は聞いた。ここが、神凪の家。 「……夢か…」 変な夢を見たな…。小さい頃の居心地の悪さを日々感じていた夢。 布団から起き上がると、すぐ頭上にある刀に目がいった。 その刀は妖刀『梦月櫻』。強大な力を持ち全ての魔から主を守り全ての妖を絶つ。世界で一番危険な妖刀だ。 そのため、この妖刀は神凪の巫女にしか扱う事を許されていない。 「…なあ、梦月櫻。どうして俺を神凪の巫女に選んだの?」 独り言みたいにそう呟く。 聞こえてるくせに答えないとか、性格悪いな……。 そう、梦月櫻は会話出来る。でもそれは己も用があった時だけ。俺がこうやって話し掛けても答えてくれないのが殆ど。てか、ほぼ。 「姫、起きてるか?」 不意に部屋の障子の向こうから声が聞こえた。 「ああ、起きてる。今行く」 .
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