第壱章

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「妖が出たと、理事長は言っていたのですが、特徴も姿もわからないとの事ですので何とも言えないのですが…その妖が出たという噂が流れ始めたのが丁度一週間前です。 物音やなにか獣のような足音が聞こえたり、後は……まるで何かを砕く音がする…らしいのです。生徒が口々に言うには、長く丸い尻尾を見たと…。そう言っているそうですよ。 それ以外は何も…」 ふうん…。じゃあ、本当に何も分かってないんじゃん。 「その噂が流れる前、3人の生徒さんが行方不明になってるそうです。きっと噂の妖に食べられたんだって専らの噂になっているそうですよ。」 「神隠しとか…?」 「……いえ、きっと、死んでいるでしょう。」 そんなあっさりと殺さなくても…。 「柚姫」 すると、年老いた声が俺の名前を呼ぶ。婆婆様だ。 「何でしょう。」 「お前のお目付役…妖3匹はちゃんと首輪を嵌めて置きなさい。暴れないように、しっかりと。あれは、人に見えるが中身は只の凶悪な獣。化け物だ。いつ本性を剥き出しにするか分からぬのだから」 婆婆様のその言葉に、俺はカチンときた。 「失礼ですが、婆婆様。俺は、あの3人を化け物だなんて思った事はございません。いつだって俺を守ってくれる頼もしい守護人です。先程の婆婆様の発言…、いい気分にはなりませんね。」 怒気を含んだ声。きっと婆婆様にこんな事を言うのは生まれて初めてだ。少しでも逆らえば、どうなるか…俺はよく分かってる。 ほら、ああやって、眉間に皺を寄せて頭に血が登ってる。 「柚姫、一体誰に向かってそんな口を聞いているのです?私はお前の祖母ですよ。大層な口を聞くのではありません。」 かなりピシッとした雰囲気の中、ハッキリとした口調の婆婆様に俺はちょっとビビった。以外に迫力があるもんだからさ。 「…分かっています。けど、俺の友達を悪く言うのはたとえ婆婆様でも、許せません。」 一瞬で意志の固い目に変わる。婆婆様は柚姫のその瞳を見てため息をついた。 「はあ…。お前はいつからそんな頑固になったのか…。母親に似たのですかね」 え。母様って頑固か?どっちかっていうと婆婆様の方が頑固じゃ……。 そう思っていたら急にキッと見られた。 .
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