第壱章

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「まあいいです。では、依頼の事は任せましたよ。次期神凪の巫女として恥の無いように務めなさい。」 「………はい。」 結局はそれなんだよな。神凪の名を汚すなとか神凪だからとか……全部家が大事かよ…。まぁ…神凪の役割がどれほど重要かってのは分かってるけどさ….。 婆婆様のあの言葉を最後にして俺はあの部屋を出た。敷居の向こうには鬼童丸と、未連祈がちゃんと言いつけ通り大人しく待っていた。 『あれは凶悪な獣。化け物だ。』 婆婆様の言葉が頭ん中を蘇らせる。文字通り、2人は歴とした妖しだ。しかも大妖怪と言われてる妖。 神凪の姫、又は巫女には守護人が3人付く事になっており、お目付役も兼ねている。だが、神凪の守護人は他と違い人間では無く妖が守護人となるのだ。 それは古くからの神凪の掟のようなもので、鬼童丸と、未連祈、あともう1人、ずーっと昔から神凪に仕えているんだ。 神凪に縛られてるっていうのがしっくりくるけどな…。好きで敵である祓い屋の守護なんかしないし。 鬼童丸はあの有名な大江山の酒呑童子・鬼童丸っていう鬼の大妖怪。昔は色々悪いことしたらしいけど、神凪の祖先?初代神凪の巫女によって神凪の守護人に選ばれたそう。 未連祈という名は初代神凪につけてもらったそうだ。確か本当の名前は"玉藻前"。人間の姿になってる時は金髪頭だけど、本来の姿は白い九本の尾を持つ妖狐。鬼童丸同様に初代神凪に守護人として選ばれた大妖怪。 そして、最後に今ここにいないけど、真珠浪っていう奴。漆黒の翼を持つ大天狗の妖。こいつも鬼童丸と未連祈同様に大妖怪である。初代神凪に選ばれた1人だ。 何でいないかというと…朝に弱いから?妖のくせに低血圧とか言うんだ。 「….!姫!大丈夫か?」 「ん?あ、ああ。大丈夫大丈夫。何ともねえよ…」 「何かあったのか?」 鬼童丸まで…。2人して恐い顔だぞ。普段はカッコいいのに。 「んー…。じゃあ説明するな」 それでさっき母様から聞いた依頼の事を話す。 「成る程な…。分かった。喜んで姫についていく」 .
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