セオドアの困惑

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 すがるようにカインを見やる。カインは口を手で抑え、俯いていた。ただし、震えながら。 「あの…カインさん…?」  心配になって顔を覗けば、カインは尚も口を手で抑えつつ、頭を上げた。 「仲良しって…!」  どうやら、笑いを堪えていたようだ。 「何が可笑しい」  置いてけぼりを喰らったセオドアを他所に、ゴルベーザは抑揚の無い声で、笑い続けるカインを批難する。 「だって…おまっ…年齢そこそこいってるオッサンが『仲良し』って…!」 「間違いではなかろう」 「せめて『友人』とかだろ。…お前、月で寝てる間に知識とか落としてきたんじゃないか」 「む……かもしれんな」 「そこは認めるのか」  何やら楽しげである。周囲は呆然としているが。  訳が判らないといった表情のセオドアに、カインが軽く説明する。 「セオドア、こいつは見た目に合わず天然だ。お前の父親と似てな。無表情で判りにくいが、今は単に恥ずかしがってるだけだ」  言い終えるや否や、恥ずかしがっているらしいゴルベーザに足を踏まれたカイン。鎧を装着している筈だが、「いっ…!」と声をあげた。黒魔導師のくせにガタイが良いだけはある。  そこへ、今までのやり取りを聞いていなかったらしい、セオドアの父にしてゴルベーザの弟セシルが周りの空気を読まずにやって来た。 「楽しそうだな、何の話?」  カインは未だ笑いながら答える。 「お前の兄貴が俺と仲がいいなって話だ」 「仲がいい?」  首を傾げるセシル。 「いい事じゃないか。そうですよね、兄さん」  嬉しそうに微笑み、無表情の兄を見やる。 「な、セオドア。似てるだろ、この二人」 「え、えーと…」  さらっと言ってのけた父にドン引きしつつも、セオドアは再度納得した。セシルとゴルベーザは、本当の兄弟であると。  取り敢えず、周囲の面々は違和感に苦しめられながらも、平和に解決して良かったと胸を撫で下ろしていた。
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