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急な山道と、背の高い木々の間を、二つの影は朝からさまよっていた。
山すその市で聞いた話も、半信半疑だったが、今はそれを信じ
探すしかなかった。
二人の第一の目的は、刀鍛冶の「マサムネ」を探すこと。
自身の力量では、数打ちの太刀が耐えられないからだ。そのことは、
前日の賊の襲撃ではっきりした。
賊は追い払ったものの、二人とも村を出るときに渡された太刀を折っ
てしまった。
「ほんとにこんなところに「マサムネ」はいるのかね・・・」
一人がつぶやく。だいぶ山道を歩いたせいもあって、少し肩で
息をし始めていた。
「間違いじゃないと思うわ、麓の町の人たちが使っていた刃物は、かなり出来がよかったから」
もう一人が答える。日を避けるため二人とも頭巾をかぶっているが、
理由はそれだけでもなさそうだ。
「大体、師匠も人が悪いよな、紹介状さえもたせれば、それでいいと
思ってる。これでは今日中に見つかりそうにないな」
一人は休みたいのだろう、少し弱音をはいた。それをみてもう一人は、
くすくすと笑う。
「しょうがないわね、アンヨウは・・ここで少し休みましょうか」
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