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もう一人が答える。日差しを避けるためであろう、二人とも頭巾をかぶっているが、理由はそれだけでもなさそうだ。
「大体、師匠も人が悪いよな、紹介状さえもたせれば、それでいいと思っている。これでは今日中に見つかりそうにないな」
一人は休みたいのだろう、少し弱音を吐いた。
それを見て、もう一人はくすくすと笑う。
「しょうがないわね、アンヨウは・・・ここで少し休みましょうか?」
「お?ゲンゲツ、休むのか?そうしようそうしよう、先はまだ長い」
言ううが早いか、座るにちょうどいい木の根元を探すと、アンヨウは
我先にと腰をかける。ゲンゲツは、その後をゆっくりと続いた。
人心地ついたころ、アンヨウが口を開く。
「なあ、これで太刀を造ってもらうとしても、皇子は俺らを歓迎してくれるかね?」
アンヨウの危惧も最もだった。
紹介状一つで、刀鍛冶ならともかく、赤の他人、しかも国の王族が自分たちを信用してくれるはずが無い。
昨日の賊もそうだった。二人が幼い見かけによらず、剣術を身につけていることや、普通の少女たちでは無いことを見極めることができず、まして少女とすら気づかなかった。
アンヨウがそのことに逆上し、ゲンゲツの太刀を奪ってまで賊全員の右手首を切り落としたことで、賊は追い払ったものの、結果的に彼女たちは自分たちを守る手段が限られることになった。
その為、第一の目的を早急に果たさなくてはならなくなったのだが、
それにも増して困難なのが、第二の目的である『皇子の花嫁募集』に参加することだ。
刀鍛冶すら見つけられない現状を考えると、容易ではないことは、少女の考えでも分かった。
一般の募集は、18歳からとなっているが、彼女たちは15歳である。
この歳で保護者も無く旅をしているのには理由があり、村の掟で彼女たちはこの歳になると、村の外に出稼ぎに出ることになっている。
その為、剣の師匠が皇子の元指南というつてをたどって、紹介状の登場となったのだ。
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