0人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
とある屋敷の庭。美しい桜の木の下で彼は書物を読み耽っていた。
屋敷は朝から急な客人が来たと騒がしかったのだ。
(たかだか客人程度で騒がしい。)
内心悪態を吐く。
彼は栄華の片鱗を手にしたこの家では地位が低い。生まれ付き病弱なのが一番の要因なのだろう。
別に、家柄なんか彼にはどうでも良かった。家督なんて兄弟にくれてやる、と迄思っていた。
虐げられ、嬌声、罵声を聞く毎日なら家を出てやるとも思っていた。
現実はそこまで甘くないが。
薄紅の桜が舞い降りる。桜を見るとなぜだか落ち着くのだ。
好きな花だと言うのもあるのだろう。
「うっわ…綺麗な桜だネ。」
和んでいる彼の耳に部外者の声が入った。
最初のコメントを投稿しよう!