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彼等が再び大広間に戻った頃に、桜織斗は京を見て回ろうと牛車を用意させた。
特に宛てなどはないが、何となく外に出たかったのだ。
牛車に乗り込み、最寄りの社迄移動を頼んだ。
社…と言えど機能はしていない。社が次々建つこの時代にしては珍しい廃屋だ。
目的は社ではない。境内に咲き誇る桜の木だ。
屋敷の桜も美しく中々の見物だが、此処の桜もとても良いのだ。
近くに澄んだ川があり、川に浮かんでいる花弁が美しさを増している。
趣があるのだ。
そう思いながら彼は桜の映える景色を眺めていた。
絵に描いたような、白とも言えない美しい桜だ、と思いながら見据える。
「…ん?」
不意に、紀伊の方面の空が白く光った。まばゆい光は、中途半端な書きかけのキャンパス上のような茜色を白く染めた。
あまりの眩しさに目を閉じる。
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