*逸話

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 光が収拾した、と思ったら目の前に少女がいた。  君は誰だ、と思いながらも問えない。  美しい黒髪。切り揃えられており、膝下迄は伸びているだろう。  深紅の瞳は何処か不気味さも併せ持っている。真っ白な肌。真っ白な袴。 「…あのぉ…」  少女が声を上げる。 「此処は何処です?」  その前に貴方が誰だと思いながらぶっきらぼうに答える。 「山城国だ。」  やましろ?と疑問符を浮かべる少女を見遣る。 「貴方は…?」 「その前に君が誰だ。」  名乗るつもりはないのだが。 「翡翠(ひすい)です…一色(いしき)翡翠。」  一色…?と聞いた事があるような名前を繰り返す。  聞いた事はある、だが…何でかは忘れた。
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