20人が本棚に入れています
本棚に追加
2026年、2月。
首都圏は慣れない大雪が降り、道路状況は麻痺。
昨日の夕方、談話室にあるテレビがそんなことを言っていた。
黒部カズキはその時テレビ画面に映っていた光景を思い返した。
アナウンサーが気温8度を示す温度計を仰々しく指さし、ダウンジャケットをまとった体を震わせていた。
しかし、今自分たちがいる場所の気温は5度だった。
しかも室内で、上着も来ていない。
指定のインナーの上に、私物のジャージ上下を身につけているだけだ。
ふざけるのもいい加減にしろ、とそのアナウンサーに言ってやりたい気分だった。
寮の洗面所はいつものようにごった返している。
カズキは行きかう人を押しのけ、開いている洗面台を確保した。
壁に備え付けられた鏡を見る。
緩やかにウェーブのかかった長めの髪に埋もれた、しかめっ面の自分の顔が映っている。
かじかむ手に鞭を打ち、蛇口をひねった。
最初のコメントを投稿しよう!