17人が本棚に入れています
本棚に追加
「面倒なのはもうほとほと理解しているから、さっさと倒してしまいましょう」
「ええ、それには同感よ。こんな事していたって、問題は解決しないものね」
そうして影猿達へと殺到する輝夜の弾幕。本来の厚みの二倍は間違いなくあるそれに、三体の影は呆気なく霧散し……。
「はぁ、やれやれね……」
正常な時を取り戻した世界の中。三秒前に消滅した事になった影達は既にその存在を失い、彼女の周りは静寂を取り戻していた。
「あら? あれって……」
ふと視線を巡らせた輝夜は、見知った背中を見つけて笑みを零す。もしかすると、彼女の退屈を紛らわす何かがあるのかもしれない。
そんな期待を胸に、彼女はその小さな背中に声をかけた。
「て~ゐっ。それに貴女は、河童のにとりさんだったかしらね。何をしてるの?」
背に受けた輝夜の声に、てゐは意地の悪い笑みを浮かべながら、対してにとりは恐縮したように縮こまって彼女を振り返った。
ニヤリと口の端を歪めたてゐの表情は輝夜からしてみれば見慣れたものであったが、にとりの様子が気になった。
元々あまり……いや、全くと言っていい程交流はない二人であったが、何故そんなにも畏まった態度なのかが輝夜には分からなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!