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「おやおや、永遠亭のお姫様がお供も連れずにこんな所へ来るなんて。駄目じゃあないですか」
「はいはい。お姫様は窮屈で嫌になるわね。でもそうね、てゐ。そんな事を言うからには、今はあなたがお供として傍に居てくれるんでしょ?」
「くひひっ、これはまた面倒な御役目を仰せつかったもんだ。まー、私はいいけど。にとりちゃんも、それでいいかい?」
「あ、うん……わ、私は構わないけど……」
頷きながらも、やり辛そうなその態度に、さすがの輝夜もどうしたのかと問うた。
「あのー……にとりさん?」
「え、あ、はいっ!?」
「いや、なんでそんなに畏まっているのかなって。私、何かこう……怖がらせる様な事したかな?」
困った様な笑みを浮かべて首を傾げる輝夜に、にとりはわたわたと手を振ってそれを否定した。
「ああ、いやっ、違うんです! いや、違わないのかな……でも、怖がってるとかそういうのじゃなくって!」
「じゃあ、どうしたの?」
「あう……いやあの、改めて考えてみるとですね。その……お姫様、なんだなって……」
お姫様。確かに輝夜は周りからは姫と呼ばれていたし、遥か昔、童話に語られる彼女はかぐや姫として羨まれる存在であった。
そこは間違いないのだが、だがそれがどうしたというのか。
尚も首を傾げる輝夜に、にとりは僅かに顔を紅くして言う。
「だって……お姫様って、偉いお方なんでしょう? 綺麗で、賢くて、皆に人気があって……その、えぇっと……女の子ならさ、憧れちゃう様なさ……」
そんな事を言って顔を伏せる彼女の姿に、輝夜はポカンと口を開いていた。
つまりは、なんだ。にとりは、輝夜を憧れの対象として見ているようなのだ。
ふと隣に視線を移せば、にやにやと粘つくような笑みを浮かべるてゐの姿。
「……えいっ」
「あいたぁ!?」
とりあえず、なんだかムカッときた輝夜はてゐの額に弾幕をぶつけておいた。
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