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いきなりの事に目を白黒させるにとりに、輝夜は取り繕う様に貼り付かせた笑みを向けた。
「えっと、にとりさん。私は確かに周りからお姫様って呼ばれているけどね、だからってそんな風に畏まらなくてもいいのよ?」
「で、でも……」
「そんな風にされちゃ私はあなたに遠慮してしまうし、あなたも窮屈でしょう? 他のお友達と同じ様にしてくれると、私も嬉しいんだけどな」
そう言って、そっと差し出された小さな手。
その手と輝夜の顔を交互に見て、次いでパッと輝く様な笑みを浮かべたにとりは、油で黒ずんだ自分の手を必死に服で拭った後、恐る恐るその手を握り返すのだった。
「くひっ。イイハナシダナー」
「お黙り、てゐ。ところでなんだけど……これ、何なの?」
てゐとにとりが見ていたであろうソレを指差して、輝夜は難しそうに眉を顰めて聞いた。
それは一見、ただの四角い箱のようであった。
色は白。かなり大きく、縦横ざっと三メートルはあろうかというそれは、天井部分からモクモクと黒い煙を吹き上げていた。
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