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魔法の森。
もしもの時に備えアリスの工房を守る為にと残った優月であったが、それは間違いではなかったと内心で自分を褒めちぎっていた。
影達の放つ弾幕群を、エアーボードに立つ優月が鋭い軌道を描きながら抜けていく。
パチュリーも製作に関わったこのエアーボードは、優月のイメージに合わせてその動きを多彩に変化させていく優れものである。
後には青い閃光が帯の様に残り、その動きだけでも相手を魅了するに足る一品なのだが……今の相手は、どうにも見とれてはくれないらしい。
「野暮ったい奴等だ! 拍手の一つも寄こせって……のっ!」
ボードを蹴り付けて宙へと飛び出した優月は遥か上空から影へと弾幕をばら撒くと、ボードへと着地し踵を返した。
そんな彼女を迎える様に手を叩くのは、こんな時にも眠たげな目をした魔女。パチュリーである。
「流石は優月ね。千秋と一緒に軽業師でもやったらどうかしら?」
「ふふっ、どうせなら他にも集めてサーカスでもやる?」
冗談の様なパチュリーの言葉に答えたのは、影の追撃を払うアリス。彼女は人形を巧みに操ると、影の攻撃を悉く打ち払ってみせた。
二人の魔女の間に降り立った優月は、ついでとばかりに弾幕をばら撒いた。
影の放った鋭角な弾幕と緩やかなカーブを描く優月の三日月型弾幕がぶつかると、張り詰めた風船が弾けるような音を立て消えていく。
「全くもってきりがねぇ。考えたくはないけど、このまんまだと物量で押し切られるぞ」
「こっちにもまだまだ用意はあるけれど……向こうの無尽蔵っぷりには敵わないし」
開いた魔法陣から、手製の人形達を取り出すアリス。
代わりに傷ついた人形をそっと仕舞い込む。戦いが終わった後、今度はそれらを繕うのだろう。忙しい事である。
「……タイプ的に、少しバランスが悪いわ。ほら、どちらかというと私達って、後方支援向きじゃないかしら?」
「む。それは私もって事か?」
「優月はこの中じゃ動ける方だけど、手持ちのスペルカードを考えれば中・遠距離タイプでしょ?」
「おろ……確かに否定はできないな」
ちらりと自らのカードを仕舞ったポケットに視線を落とし、そう呟く優月。
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