幻想の戦い

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白玉楼。 冥界を管理する大屋敷は、普段の物静かな雰囲気を物の見事に吹き飛ばされていた。 庭師を務める魂魄 妖夢が日々せっせと整え続けている見事な中庭も、今では無粋に踏み荒らされ、見るものの目を楽しませる調和の風情は見る影もない。 その事に、屋敷の主である西行寺 幽々子はまず誰よりも悲しみ、同時に憤慨していたが、しかしそんな心持ちなどおくびにも出さず、僅かに笑みすら浮かべてみせて、眼前で立ち回る妖夢に声をかけた。 「あらあら、これは掃除が大変そうね~。もし一人じゃ手に負えない様なら……」 「冗談はこいつ等影妖怪だけにしておいてください幽々子様! 心配せずとも、庭は私が直しますし、こいつ等も私が追い払います……幽々子様の身を守る盾には、なれそうにありませんけど……」 鋭い剣戟を影人へ揮いながら、眉を顰めて言う妖夢。 白玉楼に襲い掛かった影妖怪は、人里を襲った時と同じく膨大であった。 それら複数の影相手に立ち回る妖夢は、幽々子の傍にいる事すら難しい状態なのである。 しかし、そんな妖夢の言葉に幽々子は目を丸くして言う。 「あら、自分の身くらいは自分で守るわよ~。それに……妖夢。あなたいつから盾になったの? 振り回してるそれは何だったかしら?」 幽々子の言葉に、今度は妖夢が目を丸くする番であった。 幽々子よりも大きく、まさに目からウロコといった様子で。 彼女が握り、揮うもの。それは二振りの刃に他ならない。 ならば、西行寺の懐刀たる自身こそは、一振りの刃に違いない。 「……お任せを。幽々子様の剣として、火の粉は払ってみせます!」 「はいはい。その意気その意気」 気合を入れなおす妖夢に気のない相槌を打ちながら、幽々子もまた影妖怪の動きを油断なく観察する。 そして、大きな口を叩いた割りにもう手が詰まりそうな従者の姿に、やれやれと肩を竦めた。
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