幻想の戦い

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魂魄 妖夢は攻めあぐねていた。 一対一ならばまず攻め負ける事はない妖夢であったが、それが二体三体と増える度に一旦距離をとらなければならない。 そもそも。 長物を扱う妖夢にとって、徒手空拳技に優れた相手というのは天敵と言ってもいい。 得物が槍や薙刀の類であればまた話は別なのだが、手数と切り返しの鋭さ、直線での攻撃速度において、刀は拳に届かない。 それでも生半な相手であれば妖夢の鍛えた技術で捉える事は難しくないし、鉈の重さで振るわれる剃刀のような切れ味を誇る刃の内側に身を曝せる程の使い手となると、妖夢は数える程しか相手どった事がない。 一番最近で言えば、ミリアムがそうだ。 彼女の得物の特性を考えると、その間合いは極めて徒手空拳に近しい。 そして妖夢は、そんなミリアムの振るった連撃に一度は不覚をとってもいる。 さて影人はどうかと言えば、ミリアムとはまた違うタイプではあるが、間違いなく妖夢の苦手とする相手であった。 強靭な身体能力に裏づけされた脅威の拳を、多少無理やりにでも繰り出そうとするのである。 本来ならばその様な相手はカモでしかない。 遠慮なくその腕を叩き落して終いなのであるが、相手は影妖怪。ガミングのやつがポンポンと影を倒していくため忘れがちであるが、本来は凄まじい強度を誇る妖怪なのである。 実際、妖夢はその強度と強靭さに押されぎみなのであった。 一刀に膂力を込めれば打ち負ける事はない様だった。 しかし、そうなると複数の影を迎え撃つに足る角度がない。 二刀をひるがえせば複数の影を相手取る事はできる様だった。 しかし、次は一撃の重さが不足し打ち負ける事が多い。 長所が生かしきれない。その事に、妖夢は苛立ちを募らせていた。
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