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そんな従者の様子は彼女をよく知る主にはバレバレであり、幽々子は竦めた肩をため息を吐いて落とした。
「……何やってるの、妖夢」
「え、あ……す、すみませんっ、今片付けますので……」
「無理よ~。無理無理。今のままじゃ朝日が昇るまでかかっちゃう」
時間さえかければ打倒し得ると暗に言いながら、それでは満足できない彼女は唇を尖らせた。
「本当に……真面目なのはいいのだけれど、融通が利かないというか、ううん、いっそ鈍いと言った方がいいのかしらね」
「え、えっと……す、すみません」
影と打ち合いながらも、申し訳なさそうにそう言う妖夢を見て、幽々子は密やかに笑った。
そんな所が可愛いのだけれど、と。
「仕方ないからヒントをあげるわ~。一刀でなら勝てる。二本じゃ駄目~」
「え……?」
一刀でなら、勝てる。
それはつまり、一刀にのみ全精力を込めろという事か。
いやしかし、それでは多角的な攻撃に対して手が足りなくなる。
影の一撃はただでさえ重いのだ。一撃もらっただけでも後がなくなる。それではまずい。
一刀は勝てる。二刀では駄目。
いや、二刀? 違う。彼女の主は、決して妖夢の二刀流がおとるとは言っていない。ならば、二本じゃ駄目とはどういう事か。
閃きはすぐさまあった。
妖夢は一刀を構えると、烈火の如く気合と共に影を打ち据えた。
強烈な一撃は、防御にとかかげた腕を断ち切り肩口までを切り裂くに至る。
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