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しかし強烈な一撃を見舞った妖夢の、その攻撃の終わり際を見逃さない影人が間合いを縮めようとしたその眼前に。
白刃が突きつけられた。
妖夢は漸く振り下ろした刃を切り返す所。
ならばこの伸ばされた刃の出所はといえば、やはりそれも妖夢であった。
それは、ミリアムとの戦いでも見せた半霊の変化であった。
いや、変化というのは少し違う。
妖夢は半人半霊である。人の身と、霊の身を持つのだ。
それは決して何かが変じたモノではなく、間違いなく妖夢そのもの。
二人の妖夢はそれぞれに一刀を構えると、互いの間合いを重ねながら刺さる様な剣気を発した。
「魂魄……変則二刀流、と言った所でしょうか?」
「はい、正解。よくできました~」
これならば、影に打ち負けない一刀を、影に対応できる二刀と変わりなく振るう事が可能であろう。
勝機を得た妖夢は嬉々として影妖怪達に躍りかかった。
また一つ歩みを進めた半人前の背中を満足げに見つめ、幽々子はしかと頷いてみせる。そして、
「どうせなら、今はあの子の経験の為に散ってちょうだいね」
無粋にも不意を打とうと飛び込んできた影猿に、幽々子から飛び立った死蝶が舞い降りる。
瞬間霧散した影を手にした扇子で鬱陶しそうに散らしながら、彼女は周囲を舞う死蝶を誘い続けた。
西行寺 幽々子。『死を操る程度の能力』を持つ彼女にとって、いかなる強度も意味はなさないのだから。
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