~プロローグ~「私の隣人」

2/11
前へ
/89ページ
次へ
「るーーーーねーーーーーちゃーーーーん!!!!!!」 今日も、私はベランダの柵から音一つしない、隣の302号室のベランダに向かって声を掛ける。 ここはとあるアパート。301号室のベランダから私の声が響く。 いつも静かな私の隣人。朝は決まって私がベランダからモーニングコールをする。 別に頼まれたわけでやってるのではない。 隣人も朝から、こんな大声張り上げてそれはそれは迷惑だと思っているだろう。 ただ、私が気になってしょうがない。 まぁ昔から自分から心配性というのもあるけれど…。コールをするのはちゃんと理由がある。 私の隣人の部屋から、ほぼ丸一日中話し声が聞こえない。驚くことに、一日中物音すら聞こえない日もある。 ちなみに話し声が聞こえないというのはあまり気にしてない。 時間が夜ってこともあるけど… 私の隣人は“超絶無愛想”だから。 私は日常的に会社から帰ると、携帯いじったり夕飯を作ったりしながら、壁一枚先の隣人から聞こえる音で様子を伺う。聞き慣れた包丁で食材を切る音や皿を洗う音が聞こえれば安心して眠りにつくことができる。 しかし昨晩のことだった。大抵夜は何かしら隣からいつもの慣れた音が聞こえるのだが、 全く聞こえなかった。 何かあったのか、一晩中心配した。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加