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「おとーさんつれてきたよー」
少年が高くなった視界から見つけたふたりに大きく手を振った。おい、落ちるぞ。と悪ふざけに身体を揺らされ、焦って彼の頭にしがみつく。
「おかえりなさい、晩御飯作るからパパはこの子たちを見ててもらえるしら?」
エプロン姿で髪の毛を結んでいる彼女は、料理はマネージャーに任せて、青春してきてね。と付け加えた。
「はは……りょうかいしましたマネージャー様」
「あー、良太ちっちゃーい」
呆れたように笑う彼の上から、見下げた先には自分とおんなじ顔。さっきまで同じ横にいた双子の兄。彼はむすっとした顔でふたりを見上げていた。
「とーさん、シュンばっかりずるい」
「あーはいはい良太も後で乗せてやるから……そうだ! 良太、こっちにこい」
「なーに?」
「いいからいいから」
まだ乗っていたいと嫌がる駿太を地面に降ろし、ふたりを木の下に立たせると彼は笑った。
「一度やってみたかったんだよなぁ」
そう言うとおもむろに良太の頭を押さえつけ、そこの高さに石で傷をつけた。
巨大な木の幹に、一本の線が引かれた。
「さぁて、駿太は良太よりも高いか、低いか」
その言葉に、ふたりは顔を見合わせる。まるで鏡写しのようなふたり。同じ顔でお互いを見つめ合う。
「駿太の方が高いよ!」
と駿太
「ぼくが駿太に負けるわけないよ! お兄ちゃんだもん」
と良太
「はは、さぁてどうだろうな……じゃあ、引くぞ」
木の幹に競い合う傷が2つ。来年は4つ。その次は6つ。そして……翌年は8つとそれを追いかける傷が1つ。
背比べをするドングリを2つ。
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