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彼が出て行った後の部屋。
私は寝室を片付けようといつも二人で眠っている部屋に足を運んだ。
「あれ?」
さっきは気づかなかったが、寝室にある小さな彼のデスクの上に、私の写真立てが増えている。
「もう……ユウったら。私に内緒で、こんなものを置いちゃって。カワイイんだから」
ふふ、っと彼に愛されている自分を思うと、勝手に綻ぶ口元に愛を感じた。
そして、その写真がどんなものかを気になって私は手に取る。
「これ……一緒に夜景を見に行った時に撮ったものかしら」
彼が可愛い写真立ての中に入れていたのは、いつだったか、忘れてしまっているのか、なかなか思い出せない二人の写真だった。
「うん? あれ、これって……」
写真立てを動かしたら、その下に何やら切り取られた一枚の新聞の記事が置いてあった。
「何か仕事で使うものなのかしら」
私は不思議に思ってそれを手に取る。
そこには自分の目を疑うしかない事実が記載されていた。
ーーーー○月×日(土曜日) 都内の森林公園で、深夜十一時、通行人をナイフで切り裂くという、無差別殺人事件が発生。なお、その被害者で、居酒屋勤務の女性、高山里奈さん(25歳)が胸部を刺され即死。犯人はまだ捕まっておらず、その行方を警視庁は引き続き捜査を続けている。
「………」
愕然とした。
そこには私の名前が記載されている。
私が……死んだ?
何故……
どうして……
さっきまで彼が私とおしゃべりしてたじゃない!
こんなの……
きっと彼の悪戯だわ。
間違いない。
彼が私を驚かせようと作ったものだわ。
だって、私は……
ここにいるから。
私は映画やドラマのような幽霊を思い浮かべた。
手を上に翳す。
大丈夫。
ちゃんと手もある。
今度は足を見る。
大丈夫。
ちゃんと足もある。
……だったら何故。
私は真実を確かめたくて、彼の帰りを待った。
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