貴方の傍に

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夕方になって、玄関のドアが開く音がした。 彼だ! 私はずっと落ち着かなかった。 あんな手のこんだ悪戯を彼がするわけない。 でも、あの夜景を見ていた時の記憶が曖昧すぎる。 彼とのデートはいつもちゃんと覚えているし、手帳にもしっかりマークを付けているのに。 そういう焦燥感が否めないでいる今は、確実に彼に会うのが懸命だ。 そして玄関に私はかけて行く。 「お、おかえり! ユウ! あの……新聞のことなんだけど!」 私は思いっきり彼に叫んだ。 すると彼が玄関に入るなり、 「ただいま。リナ。今日は約束通りアップルパイを買ってきたよ。リナのお気に入りの駅前の店でね。一緒に食べようか」 彼はいつも通り優しく微笑み私に言う。 「違うの! そうしてくれるのは嬉しいんだけど……私の新聞の記事、どういうことなの? 私を驚かせようとしているの!?」 私は懸命に訴え掛ける。 でも、彼には私の声が届いていないようで、彼はリビングの方へ歩いて行き、 「今日は疲れたよ。ずっと僕はリナのことを考えてたんだ。一人で寂しいんじゃないかってね。僕がもっとしっかりしないと、リナを守れないのに……守れないのに……」 「ユウ……!」 彼は鞄を下げたまま、アップルパイを見つめて、寂しそうな表情をした。 「ユウ? ねえ、ユウってば! 私、ここにいるのよ? 分かるでしょ? ねぇ、どうしてそんな表情するのよ! 一緒にアップルパイ食べるんじゃないの!? ねぇ、ユウ……私はちゃんと守られているよ……?」 私は彼に近づき、彼を抱きしめる。 しかし…… 私の想いは虚しく、腕が…… 彼をすり抜けていく…… やっぱり私は。 本当に……
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