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すると彼が、台所へ行き、水を汲んで深呼吸をしている。
そのあと、彼が、うっ、うっ、という嗚咽が聞こえるのが分かった。
「リナ……ふふ、僕って本当にダメな男だね……僕、リナがいなかったらやっぱりダメだよ。こんな……一人でリナを想い続けるなんて、僕には……僕の愛おしい人はリナしかいないんだ……リナだってそうだろ……僕は君をちゃんと護るって……決めたんだから……」
すると、彼が、キッチンに置いてあった、包丁を取り出して、
ひと思いに腹部を貫いた。
バタン、と彼が崩れる音がした。
すると、彼は何がに縋りつくかのように、手を伸ばす。
「リナ……今すぐ、僕が行くから……待っていてね……君を、もう寂しくなんてさせない……」
真紅に染まった手で私を探すかのように這い蹲る彼。
「ユウ! そんなの私求めてない! ユウが……ユウが私の分まで幸せになってくれないと意味がないの!」
私は涙を何筋も流して、彼に叫ぶ。
その時、私は彼を失う怖さを初めて知り、彼の無事だけを祈った。
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