クレス・スタンノートの苦労

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 当時十歳であったアルト王女殿下に私が仕え始めたのは、今から約二十年以上も前の事。  十と二つの年齢であった私は、異例の事ながら最年少で<騎士>の称号を授与された。  そして私は幼いながらも騎士となり、今までアルト王女殿下の我儘に振り回されてきた身とすれば、今さら嫌味の一つや二つそよ風同然である。  嫌味事を吐き出すにも飽きたのか、アルト様は外の景色へ意識を移した。それに吊られ、自然と私も視線を動かす。  束の間の平和。現在、グランスワール王国を脅かす敵国は存在しない。  そう、<敵国>は。  一ヵ月ほど前の事、我らが住む大陸に<魔王>の使者を名乗る者が訪れた結果、世界の情勢は国同士、人間同士の争いなどしている場合では無くなった。  魔王、つまりは魔界と云う<異世界>を統べる王である。その使者が言うには、<魔王>は現在、グランスワール王国から見て南に位置する険しき山脈に居を構えているとの事だ。
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