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教室にやってきた。
ドアは開いている。
入り口近くに溜まっている奴等にぶつからないように注意しよう。
僕の席は、一番真ん中の一番前の席。
サボれないから不人気な場所だ。
くじで決めたのだけど、本当に僕は運が無い。
……椅子を引くのは流石に気づかれるだろうから、とりあえず机に座ってみた。
誰も、話すのにもこの席は使っていないし
――教室に居る人を見回す。
今の所誰も、僕の名前は持っていない。
もしかすると、嫌いとも思われない、存在さえ目に入っていないのかもしれない。
そうだとしても何らおかしくはないだろう。
どうせ誰も、ノリが悪くてつまらない、無口な人間に興味なんて持たない。
そんなの百も承知だ。
やがて、担任の教師がやってきて、点呼を始める。
……そういえば、欠席の電話もしてないな。
でも今、僕は居ないのだから、何も言っていない方がいいか。
担任は僕の名前を呼び、返事が無い事をスルーする。
というか、居ない事には気づいているのか次の生徒との間が無い。
だけど、そういえばいつもこの先生は少し返事が遅れただけで飛ばしていく。
今日もそうなのかと、静かに机から降り、名簿を覗き込んでみる……。
【小吹 礼(こぶき れい)○】
………………。
……おい。
そこには僕の名前と、出席していると印がつけられていた。
もしかすると僕は、声のとても小さい生徒だと認識されているのかもしれない。
でも、一番前の席なのにこれは無いだろう。
やっぱり僕が居なくても、何も変わらないんだ。
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