39人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、いつもと同じ満員電車に乗ると、カール頭を発見した。
俺は会社員、サラリーマンというやつだから、毎日毎日同じ時間、同じ車両にのっているのだが、あのカール頭はいつも同じ電車なのだろうか?
昨日はじめて見かけた気がする。
また埋もれているカール頭を眼でおっていると、目が……あった。
眠そうな目をさらにとろんっ、とさせたかと思うとニコッと笑う。
―― 俺に笑いかけてる、のか?
昨日のあれだけで、顔を覚えられたのだうか?
駅に着き、人の乗り降りで一瞬空く車内。
カール頭はニコニコしながら、俺の側までくると、ぽすんっと頭を胸元に埋めて……
「お、おいっ?」
慌てる俺をよそに、聞こえてくるのはすこやかな寝息。
―― マジかよ……
まさかの、まさか……だ
昨日の朝と同じようにすやすやと眠りだしたっ!
離そうにも、なだれ込む人に押しつぶされて完全に動けなくなってしまった。
香ってくるのはバニラの香り。
甘い甘い香り。
この香りをかいでいるとおかしくなる。
なんだか、頭がぼんやりしてしまうのだ。
次の駅は俺が降りる駅。
今日こそは、降りるっ!と決心し、カール頭の身体を離そうと押したのだが、「んぅっ……」と迷惑そうに唸った。
迷惑なのは、こっちなんだが……
もっと、強く突き放さないと、また降りれなくなる!会社も遅刻だ!
最初のコメントを投稿しよう!