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その日は雨だった。
男は硝子戸に身を預けたまま外を眺めている。
つけっ放しのテレビと雨音が混じりあい、雑音が溢れる様に室内に響き渡る。
リビングの部屋は散らかった衣服や、食べた弁当の跡が散らばり、キッチンには洗い物が山のように積まれていた。
男は硝子戸を離れると伸びをしながら時計を見る。
昼の十一時と言うのに、空には分厚い雲がかかっており、普段なら光の溢れる室内は薄暗くなっていた。
視線を落とすと、長方形型テーブルの上に置かれたカレンダーには印が付けられていた。
その日から彼女はもう居ない。
たった三日でこの有様だった。部屋中にはゴミで足の踏み場もなかった。
彼女の有難さが、その光景を通して自身と室内に物申している様に思えた。
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