非日常への入り口

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これが初めてという訳ではなかった。 それもあってか、位置を把握していた俺は、鞄をすぐに見つけることができた。 鞄をあさり、黒い革のサイフを開く。 …! 1万しかねーよ!た…足りねーじゃん! やべー… 約束された5分が迫ってくる。 悩む時間なんて俺にはなかった。 一万円をクシャッと握り、ポケットへしまうと、家を飛び出して東駅へと向かった。 足をただただ前へ、ひたすら前へ。 できるだけ前へ…! 体力なんて、もうとっくに限界を超えていた。 恐怖が俺に鞭を振るう。 その度、失速したスピードを取り返すように、俺は足を前へ出した。 東駅が視界に入ってくると同時に、小太りな長身の男が改札の前で座っているのが分かった。
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