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雨が降り続く6月18日午後5時46分。
海と大きな空港で知られるこの町のとある学校で、僕はただ一人、傘を探していた。
「……………無い」
確かに今朝、学校に持ってきたグレーの傘。母親から誕生日に買ってもらった、結構気に入っていた傘は、今は何処へ消えてしまった。
傘立てには、クラスの田中くんの、いかにも百円均一で買ったようなビニール傘しか置いていない。つまり一言で言うと、僕の傘は無い、ということだ。
誰かに盗られたのか。
傘を持ってきた、という自分の記憶が間違っているのか。
「はぁ………」
思わず溜め息をつく。
傘を持たずに帰ってもいいと思ったが、外は予想もしない大雨である。
最近流行りの、ゲリラ何とか……というやつか。
こんな雨の中、傘もささずに歩いている馬鹿が何処にいる。傘が無ければ必ずと言って言いほど、風邪をひくだろう。風邪は御免だ。明日からは、楽しみにしている修学旅行があるのだから。
本当、今日はろくなことがない。
隣のクラスに居る好きな子に彼氏が出来たこと、イコール、今日は僕の失恋記念日といったところか。
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