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小夜は、美波の性格が気にくわない。
何時もヘラヘラしていて尚且つ周りを見ることが出来ない自己中心的な言動や、腹が立つ程の天然さ故に、だ。
だが、それだけではない。
小夜には憧れの先輩であり幼なじみ、拓也のことが好きだった。
拓也は、近所の優秀な進学校に通っていた。誰もが見惚れるルックスと面倒見の良さが評判で、拓也が所属するバスケットボール部には、毎日の様に女子生徒が集まった。
拓也は忙しいにも関わらず、何時も小夜に気を遣ってくれていた。
勉強が解らないと訴えれば親切に教えてくれたし、暇さえあれば遊びにだって付き合ってくれた。
小夜は、そんな拓也に恋心を抱くようになっていたのだ。
だが突然、彼は小夜の前に姿を見せなくなった。
そして。
去年の今日、拓也は行方不明に…いや恐らくは死んでしまったのだ。
その連絡を受けた小夜は、酷く悲しんだ。
しかし美波の態度に変化はなかった。
美波と拓也は、実の兄妹である。
そんな彼女が兄の死に無関心な雰囲気なのが、小夜には疑問点だった。
もしかして、美波が殺したのではないか。
…その事が何時も小夜の脳裏に浮かぶ。
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