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「……ごめんね明、私が守ってあげられなくて。
家にいてあげられなくて」
涙声で話す母の言葉が、暗闇の中に落とされたような心に響き渡る。
もう誰もいない、そう思っていたのに。
私にはまだ、私を心配してくれる存在がいた。
母の前で涙を見せるのは恥ずかしくて、私は鼻にツンとした痛みを感じながら笑った。
「何よ、急に何言ってるの。
ねえ、暑いよ。
とりあえず中に入らせてよ」
「ああっ、そうね。ごめんね」
慌てたように離れた母の顔を見ると、今泣いたばかりとは思えない程瞼が腫れていることに気付いた。
……母さん?
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