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この時、私が今まで心の奥底にしまっていた、どす黒いのが表に出てきたのを感じた。
私を無視し続けた者達への恨み。
私の存在を○○のように扱い、触れようともしなかった者達へと怒り。
真っ黒な感情が私の中と渦巻いていた。
(許さない。許さない。許さない!こんな時まで、私を○○のように扱う、こいつらが・・・・!)
空から雨が降り出した。この雨だけが、今、私が存在することを証明してくれた。
だけど、もう全ては遅い。この感情だけは抑えきれない。こいつらに、復讐するまでは、感情は消えないし抑えきれない。四半世紀以上も溜めてきた感情だけは。
「ああああああああ!」
私は最期の力を振り絞り叫んだ。その叫び声は突然、聞こえなくなる。いえ、叫び声だけではない。私の耳には、何の音も聞こえない。ただ、ひたすら静寂だけだった。人々の喧噪も車の騒音も、雨の音でさえ聞こえなかった。
突然、目の前で不思議な現象が起きる。さっきまで、平然としていた人達が一斉に苦しみだした。車も勢いとコントロールを失い、店舗に激突した。激突した車からは、少しも火の気が上がらない。
あれだけの事故で。どうして?
さっきまで騒がしかった人達は皆して、口から泡を吹いて倒れた。
雨粒も何だかおかしい。滴だったはずの雨は、線のように真っ直ぐに降ってくる。滞りなく。いつの間にか、空からは、雲が消えていた。雲の水が地上に一気に降ってきたかのようだ。
何もかもが狂い出したようだ。
(そうか・・・)
私は以前、読んだことのある本の内容を思い出し笑った。笑い声は、響くことなく私の頭の中だけで響いていた。
(私という存在は、すでに○○だったのね)
全てを悟った私は神様に感謝しました。私の復讐を為し得たことに。
やがて、バランスを失った建物は崩れ去るだろう。あとに、残るのは残骸だけ。
これが、世界の終わりなのだと。中には生き残っている人もいるかも知れないけど、もう長くは持たないだろう。いずれ、皆、死んでいく。
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