オキクの復讐

108/128
前へ
/128ページ
次へ
 5人一斉の驚嘆の声のあと、息せききったように思い出話に花が咲く。 「あのー…。」  帰ってきたミチエが申し訳なさそうに入ってきた。 「同窓会でお楽しみのところ申し訳ないんですが、もう面会時間は終了したと看護師さんに怒られてしまって…。」  ベッドでユカを寝かしつけながら石嶋は、意外なこともあるものだと今日の病院での一件を思い出していた。5人がみんな同じ高校だったとは…。でも、友達に囲まれたナミ先生は、診察室での威厳のある女医とは違って、女子高校生のようで可愛らしかった。また、新たな一面を発見してしまったようだ。野球ばかりやっていた自分だけど、高校時代にナミ先生とすれ違っていたかもしれない。どんな女子高校生だったんだろう。やっぱり可愛かったんだろうな。希久美もテレサも居たのに、石嶋はナミの事ばかり考えていた。  泰佑は病室のベッドの上で、久しぶりに会った希久美を思い返していた。やっぱりあいつはかっこいい女だ。しかし自分は情けない姿を見せてしまった。こんなのは良くない。なんか希久美の前でこれ見よがしに自分の衰弱を見せつけて、同情を誘っているようだ。おとなしく養生して、一から出直そう。希久美を男として愛せないのは、本当につらいが、石嶋ならいい奴だし、きっと希久美を幸せにしてくれるに違いない。病室の薄い布団を頭から被り、何度も自分に言い聞かせていた。  薔薇の花弁が浮いているバスタブに浸かりながら、テレサはワインを飲んでいた。今日はなんか面白かったな。あたしこんなドタバタ劇が大好き。このままなんの決着も迎えないで、いつまでもドタバタ出来れば楽しいんだけど…。でも、ちょっと気になるな。5人でしょ。男の数と女の数を考えるとどうやっても女がひとり余る計算だわ…。まあしょうがないか、所詮世の中いす取りゲームだからね。テレサはグラスに残ったワインを飲みほした。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加