オキクの復讐

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「あれから私も考えてみたんだけど、一生消えない負のマークを付けるようなことかしらね。」 「たとえば…腕か足を一本もぎ取るとか。のどを潰して声を出なくするとか。目ん玉くりぬいて目を見えなくするとか?」  テレサの発想は常に短絡的だ。希久美が反発する。 「キルビルじゃあるまいし…。私たちのテイストに合わないんじゃない。」 「それに身体的ハンディを持っていても、健常者以上に明るく逞しく生きている人も多いわよ。」 「批評だけでなくアイデア出してよ。」  切れかかっているテレサを、ナミがなだめながら、ひとつの提案をした。 「悪党は結婚してるの?」 「指輪してなかったからまだじゃない。」 「なら、こういうのどう…。」  希久美とテレサがナミの話に注目する。 「男にとって生きてて一番つらいのは、男としての使命を果たせない事じゃないかしら。」 「どういうこと?」 「つまり、女喜ばすこともできず、子供も作れない。」 「そりゃ悲惨だわ・」 「そう、ここはやっぱり性的不能者にするってのが一番フィットするんじゃないかしら。」 「あそこを切り取っちゃうってこと?」  テレサの短絡発言がまた出た。 「やめてよ、阿部 定じゃあるまいし。」 「誰それ?」  ナミはテレサの無知に呆れて、希久美に向かって話を続けた。 「医学的に男性においての性的不能は、勃起不全と言うのよ。よくテレビでやってるED(Erectile Dysfunction)というやつね。解剖学的に勃起機能に異常がある場合と、異常は無いけど、何らかの心理的要因などによって満足な勃起が得られない場合とがあるの。今回当てはまるのは『心因性勃起障害』ね。ホモセクシャルは別として、精神的なストレス、性に対する誤った教育環境、失業などによるストレス、性行為に対する自信喪失が原因で発症すると言われているの。新婚初夜での性行為の失敗が原因となっておこる新婚勃起障害なんてのもあるのよ。」 「へえ、つまり心因性のEDは後天性の病気なのね。」 「さすがオキク、わかりが早いわね。」 「相手のセックスをさんざん侮辱したら、それになっちゃうわけ?」 「そんな単純なものじゃないと思うけど…。精神科学の論文に、男性を傷つけて勃起不全を誘発する代表的なコメントとして『役立たず。』『私に恥をかかせないで。』『男として終わりね。』が取り上げられていたわ。」
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