オキクの復讐

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「でも、EDを治す薬ってのは良く聞くけど、EDにする薬なんてあるの。」 「そんな薬あるわけ無いじゃない。でも…。EDに処方する薬として、PDE5阻害薬と呼ばれているものがあるの。ペニスの勃起を止める酵素PDE5(ホスホジエステラーゼ タイプ5)を阻害する薬なんだけど、逆の発想でこの酵素PDE5を投与すれば、ある一定時間は勃起をとめることが可能かもしれない…。」  ナミは話に夢中になっていたが、やがて自分の話の重大性に気付いてしまった。 「ちょっと待ってオキク!なにメモしてるの。調子に乗ってしゃべりすぎたけど、医師としてこの計画は賛成できないわよ。倫理に反する。下手すれば医師免許とりあげられてしまうわ。」  慌てて打ち消すナミに今度はテレサが話の後を引き継いだ。 「つまり整理すると、悪党をベッドに誘っておいて、ことの直前にその『なんとか5』とかいう薬を飲ませて役立たずにする。そこで間髪いれずに、『この役立たず。』『私に恥をかかせた。』『男として終わりね。』を連発すれば、悪党はめでたくインポテンツになるってわけね…。」 「ちょっとやめて!私は知らないわよ。」 「問題はどこでその『なんとか5』を手に入れるかね…。」 「きゃー。私もう帰る!」  席を立とうとするナミをふたりの親友が押さえつけた。 「ここで帰すわけにはいかないわよ。」 「そうよ、発言しなくてもいいから、私たちの話しを聞いてなさいよ。」  ふたりはナミをはさんで話し続ける。 「巻き戻すわよ…。」 「どうぞ。」 「どうやってその薬を手に入れるかが問題よね。」 「そうよね。」 「やっぱりプロじゃないと手に入らないのかもね。」 「そうよね、手伝ってくれたら、いいものあげちゃうかもねぇ。」 「そう言えば、テレサの持ってたコーチ(COACH)のバッグ。欲しがってる人いたわよねぇ。」 「惜しい気もするけど、オキクがそうしろと言うなら、あげちゃうかもねぇ。」  ふたりはナミを見た。いたたまれないナミは、ちょっとトイレへと席を立ってしまった。やはり本物の医師であるナミに協力を求めるのは無理か。残されたふたりで、あらためてナミのアイデアの実現性を検討していると、突然テレサの携帯が鳴った。 「もしもし、えっ誰?…なに?」  テレサはハンドバックからシステム手帳とペンを取り出し、何やら書き込んだ。電話を切ったテレサは、希久美に言った。
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