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「やれなくなる薬とやりたくなる薬がご対面するなんて、ミステリアスねぇ…。なんか、何でもできそうな気にならない?」
テレサの感性は時々理解できない。
「サービスで貰ったこの薬はひとつ頂くわよ。」
「いいけど…。」
「なんか超役立ちそうだわ。」
「でも、やりたくなる薬を飲ませて、すぐにやれなくなる薬飲ませたら、体が変にならないかしら?」
「なったらなったでいいんじゃない。どうせ復讐なんだから…。」
そんな大雑把なテレサの言葉に、納得していいものどうか迷いながらも、とにかく希久美はやっとスタートラインについたような気分になった。合図を待つ陸上選手よろしく、復讐がいよいよ始まるという緊張感で胸が高鳴る。
希久美は、日頃の調査と立案の能力を発揮して、綿密に復讐劇のシナリオを練った。そして、決行の日は、泰佑の歓迎会がある今夜とした。職場のメンバーが企画した歓迎会に希久美も誘われたが、当然断った。しかし、歓迎会の場所も日時も知ることができたので、終わるころを見計らって、会場の出口が見えるカフェで、泰佑を待った。この夜の為に、一度家に帰り、シャワーを浴びて勝負服と勝負下着に着換えてきた。何度もバッグの中の薬を確認しながら、緊張で高まる胸を落ち着かせた。果たして、歓迎会が終わったメンバーがトラットリアから出てきた。泰佑は、契約社員の女子の何人かに2次会を誘われているようだ。2次会に行かれてしまっては、この計画は延期せざるをえない。幸いなことに泰佑はニコリともせず女子の誘いを断り、早々に仲間と離れて地下鉄の駅に向かって歩き始めた。
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