オキクの復讐

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「それでさ、今つき合っている彼女とかいないの?」  泰佑は、希久美からいきなり繰り出された馴れ馴れしい質問に戸惑いを隠せない。 「正直に答える必要はないと思うが、そんなのはいない。どちらかと言うと女が苦手でね。」 「あら、よく言うわね。女の私を目の前にして…。やだ、なんかお尻がかゆくなってきちゃった。」  ハイチェアに座る希久美の姿勢が崩れ始める。 「私にはわかるのよ。あなたは女を泣かせる悪い奴でしょう。」  希久美の目つきが妖しくなってきた。 「こぉのぉ、たくましい身体で、何人の女の子を泣かせてきたのよぉ。」  希久美は、今度は泰佑の体をスーツの上からまさぐる。 「あの、青沼さん。ちょっと。」  泰佑は、体を硬直させた。 「冗談よ、やあねぇ。」  希久美が、ようやく手を泰佑の身体から離した。 「ところでさぁ、この店ちょっと暑くない?やだ、やだやだやだ、なんか身体が火照ってきたわ。」  希久美は手で仰ぎながら胸元に風を入れる。 「石津くんも熱いっしょ。上着を脱ぎなちゃい、なんてね…。」  希久美は、いやがる泰佑に構わず上着をはぎ取った。 「うわぁ。案外胸板が厚いのね…。そんでもって、この逞しい腕。うわぁ…。」 「シャツの袖まくるなって…。」 「こんな腕で抱きしめられたら、フフフ、女はイチコロね…。」  何がしたくて泰佑の二の腕にしがみついたのかわからない。しかしその瞬間、希久美の熱は身体が火照るレベルを超え、へその下あたりが局所的にカーッと熱くなって燃え始めた。その熱さは胸に伝わり乳首をひりひりさせ、やがて頭に登って理性を溶かし始め、徐々に覆われた本能を露出させる。だらしなく開いた口から涎が滴りはじめた。酔いも一気に回って、眼球を真っ赤に充血させる。目の焦点も合わなくなってきているようだ。 「うーん。あなた、いい匂いね。」  今や希久美は自分が言っていることすら理解できない域まで来ていた。ただ言葉が勝手に出てくるのだ。 「唇も濡れていて、ぷよぷよね。なんか美味しそう…。」  吐く息が泰佑の顔にあたるくらいの距離で迫って来る希久美に、泰佑は後ずさりせざるを得なかった。 「ふふふ。こいつ、生意気にもあたしから逃げようとしてるぜ。」  希久美の目が、獲物を狙う目になった。 「このあたしから逃げられるわけないだろ、この悪党!こっち来い。」
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