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「…ところで、青沼さんは、球を投げると気持ちいい相手はいらっしゃるんですか?」
「居るわけないじゃないですか。」
希久美は即答したが、また窓の外を眺めて遠い目をすると言葉を繋いだ。
「でも…石を投げつけると気持ちいい相手ならひとりいますけどね。」
「怖いこと言わないでください。」
希久美の何気ない答えを聞いた石嶋は、その言葉にデシャヴーを感じていた。
希久美は田島ルーム長と斉藤ルーム長を従えて、社内の大会議室で待っていた。今いる三人とやがてやってくるひとり。その人数を考えるとあまりにも大きな会議室であったが、今の時間適当な大きさの会議室が空いていなかったのだ。
「おい青沼。本当にいいんだな。」
「斉藤ルーム長、何度も念を押さないでください。」
「しかし、あいつはお前にセクハラした相手だろ…。」
「いや斉藤。彼の名誉のために言っておくが、それは誤解だよ。」
田島ルーム長が慌てて否定したが、希久美に振り返ると不思議そうに言った。
「だが、泣くほど嫌な相手だったのは事実のはずだ…。」
田島ルーム長が心配そうに希久美の顔を覗き込む。
「周りに遠慮して、無理にあいつに決めなくもいいんだぜ。」
「決めたからいいんです。それに、そろそろ彼が来ますよ。」
希久美の予想通り、ノックした泰佑が失礼しますの声とともに会議室のドアを開けた。泰佑は大きな会議テーブルの一番奥に、斉藤、田島両ルーム長を認めた。しかし、そこに希久美が居ることを発見した泰佑は、部屋に入ることを躊躇した。彼の第6感が、彼の全神経に警報を伝えた。
「なにしているんだ石津。ここに座れ。」
斉藤ルーム長に促された泰佑は、奥へ進み彼の隣に座った。しばらくの沈黙の後、会議の口火は、斉藤ルーム長が切った。
「実は、お前に田島ルーム長のところでやっている、米子コンベンションセンター開館記念事業の業務アシストしてもらいたい。」
「鳥取県商工課がクライアントなんだ。」
田島ルーム長が補足する。
「どうして自分が斉藤ルーム以外の業務をするのですか?」
斉藤ルーム長に向けて即座に発せられた生意気な質問に、上司は威厳を保ちながら言い聞かせる。
「室にとっても重要なプロジェクトだから、ルームの垣根を越えた協力は当然だろう。」
「自分でなければならない理由があるんですか?」
「それが…、青沼の指名なんだ。」
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