オキクの復讐

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 ナミは、ユカと手をつなぎながら、すまなそうに話すパパの様子をあらためて見た。見た目で彼の年齢を推し量ることは難しいが、若いその容姿から自分と同じ世代であろうことは容易に想像できた。休日の私服は決して高価なものではなさそうだが、そのきちんとした着こなしは、彼に並み以上の教養と品を感じさせる。その体形は長身で細身ながら決して詭弱なものを感じさせない。実の娘ではないユカがなついているところ見ると、それなりの優しさも持ち合わせいるのだろう。そう言ってしまった動機は、ナミ自身にも未だに不明だが、その時はいたって自然に誘いの言葉を口から出すことができた。 「ユカちゃんもパパもお昼食べました?私まだなんです。よろしければ、お昼をご一緒に食べながら質問にお答えしてもいいかしら。」  ナミとパパとのやり取りの雰囲気を察したユカは、何も言わずパパの手を振り切って今度はナミと手をつないだ。賢い子ね、ユカちゃんは…。そう思いながら、ナミは彼女の頭を優しく撫ぜた。  ナミのいきつけのパスタの店へ向かう道では、ナミとユカは手をひと時も離さず歩いた。道すがら女性物の雑貨店を発見したナミは、パパにひとこと言ってユカと店に入っていった。パパは、店の外で待ちながらユカの様子を心配そうにのぞいていたが、彼女たちは、店の中で髪留めを選んでるようだった。ナミがユカの髪をまとめながら、様々な髪留めを試している。そんなふたりの姿を見ながら、パパは決して自分が入って行けない女の世界を感じていた。やがて、出てきたユカを見ると、髪に可愛いシュシュを付けていた。髪留めひとつでこんなにも女の子の印象が変わるのかと驚いた。 「はじめてユカちゃんと会った時から気になってたんです。髪をまとめるともっと可愛い女の子になるなって…。」  そういえば、ユカの髪をとくなんて思いもつかなかった。パパはそう思いながら、可愛くなったユカの後ろ姿を見守った。  パスタの店では、ユカがよく喋った。ナミは聞き役と言うよりは、同じ世代の友達のようにおしゃべりした。パパは圧倒されながらふたりの会話に聞き入っていたが、たった5歳のユカにも好きな人、嫌いな人が居て、こんな悩みがあったのかと初めて知ることばかりだった。 「わかったわ、ユカちゃん。今度はパパとお話する番だから、ちょっと待っててね。さて、お待たせしました。ご質問はなんでしょうか?」
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