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「えっ、ああ…お聞きしたいことは…すみません、忘れました。」
「まあ、どういうことでしょう、ユカちゃんパパはもしかしらた認知症っていう難しい病気かしら。それともみんなでお食事したくて嘘ついたのかな…。」
キョトンとするユカの口に、ナミはフォークに絡めたパスタを運んだ。ナミの言葉に慌てたパパは盛んに言い訳をする。
「先生、すみません。そんなつもりはなかったんです。」
「私の名前は先生ではありません。荒木ナミといいます。」
「はい、荒木先生。」
「私は、まだお名前をパパの口からお聞きしてませんが…。」
「すみません。この子はユカ。私は石嶋隆浩と言います。それから、自分はユカのパパではありません。叔父です。」
「はじめまして、ユカちゃん。私はナミ先生よ。」
名前を呼び合いながらふたりは、テーブルの上でハイタッチをした。
「ユカちゃんは。パパのことを何と呼ぶんですか?」
「くどいようですが、自分はユカのパパではありません。叔父です。」
「はいはい、叔父さん。で、なんて呼ばれてるんですか?」
「…ヒロパパです。」
「やっぱりパパじゃないですか。かっこつけちゃだめよね、ユカちゃん。」
そう言いながらナミが笑うと、ユカも笑った。やがて笑いもおさまると、ナミは笑顔で石嶋に向って言った。
「わたしもヒロパパってお呼びしてよろしいかしら?」
「その呼び方がお好きならどうぞ。ご勝手に。」
「ヒロパパ、そのかわり私のことナミ先生って呼んでもかまわないですよ。」
その後のナミ達のテーブルでは、食事が終わっても3人の話しは弾んだ。ナミ先生、ユカちゃん、ヒロパパ。そう呼び合いながら食卓を囲むと、その席だけ別世界にあるような錯覚に陥る。ナミは、プチ・パレスのチイママの話しが、あながち嘘ではないなと感じていた。
「泰佑、会議資料の準備できた?」
「ああ、20部だったよな。」
「ちょっと、あたしが指示したページネーションになってないじゃない!」
「こっちページ立ての方が明らかに論理的でわかりやすい。」
「なんで、あたしの言うとおりにやらないのよ!」
「言われたままの仕事を望むなら、アシストにバイトでも付けろ!」
「ほんとにもう…。時間ないからいいわ。いくわよ、泰佑。」
「オキク、半分資料持てよ!」
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