オキクの復讐

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 編集長は、いつになく馴れ馴れしく接するテレサをいさめながらも、ふたりを交互に見比べながら言葉を続けた。 「でも、まさか石津さん、そんな呼び方が許される間柄なんですか?」  妖しく微笑みを返すテレサの視線を避けながら、泰佑が慌てて否定する。 「以前一度お会いしただけで…。市橋さんが考えているほど親しくはないと思うんですが…。」 「やだぁ、照れちゃって。いずれにしろ編集長、この件は任せてください。泰佑のお役にたちますから。」 「今さらだが、お前を担当にしたことに一抹の不安を感じるよ。」  意気込むテレサを見ながら、編集長がため息をつく。 「しかし、知らない仲でもないようだから、後はふたりで詰めてください。」  編集長はそう言うと、ふたりを残し応接室を出ていった。テレサはあらためて泰佑を眺めまわした。この男がオキクをどん底に陥れた悪党か。しかし、高校時代にオキクがぞっこんだった頃もこんなにいい男だったかしら。高校時代はわからないが、今の彼は本当にセクシーだ。ああ、こんなセクシーな男がインポテンツになるなんてもったいない。短いスカートでありながらも大胆に足を組むテレサに、舐めるように眺めまわされて泰佑も居心地が悪くなってきた。 「記事にして頂きたいメッセージポイントですが…。」 「はいはい、お聞きしましょう。まずお仕事を済ませてしまいましょうね。」  編集担当に戻ったテレサは、泰佑の話しに耳を傾け、雑誌として記事化が可能なことと不可能なことを明確にしながら仕事を進めた。仕事モードのテレサは案外出来る女なのだ。  しばらく話し合った後、合意点が見つかったところで泰佑が席を立った。 「市橋さん、この内容で持ち帰らせていただき、財団に決裁を仰ぎます。今日はありがとうございました。」 「いいえ、こちらこそ、お疲れ様でした。」  泰佑が応接を出ようとすると、その背中にテレサが誘いの言葉を投げかける。 「よろしかったらワンショットご一緒しません。」 「お誘いはありがたいのですが、まだ会社で自分を待っているスタッフがいて…。」 「純広の話だったら、これで終わりでもいいんですが、編集タイアップでよりいい記事を作ろうとしたら…。」  テレサが泰佑の名刺を指でもて遊びながら、上目遣いで泰佑を見た。 「担当同志、より深いコミュニケーションが求められると思いません?」
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