オキクの復讐

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「どんな答えを期待されているかわかりませんが、別になにも感じません。」  なによ、この薬効かないじゃない。サービス品はこれだから嫌になる。最後の仕掛けも空振りして、さすがのテレサも諦めるしかなかった。 「引きとめてごめんなさい。仕事がんばってね。石津先輩」  テレサからやっと解放された泰佑は、クラブラウンジを飛び出して入った。 「あいつ、すぐ帰って来るって言ったのに何やってんの。」  打合せの為に泰佑の帰りを待っていた希久美の忍耐もそろそろ切れかけてきた。よし、これが最後の電話だ。もしでなければ帰ってしまおう。希久美は泰佑の携帯に電話をかけた。しばらくの呼び出し音の後、回線がつながる音。 「泰佑、あんた何やってるのよ。いつまで待たせるつもり。いい加減にしてよ。」  強い口調で攻め込む希久美に、帰ってきた返事はあまりにも弱々しい声だった。 「オキク…。助けてくれ…。気持ちが悪くて、動けない…。」  泰佑が告げた新宿西口の中央公園へ希久美がタクシーで駆けつけると、果たして彼は吐いた汚物にまみれて、公園のベンチに倒れていた。 「どうしたの?あたしが待っているのに飲んだの?」 「脅迫されて…。しかし1杯だけ。」 「それだけで、なんでこうなるの?」 「また一服盛られた…。」 「またって…あんた、いったい何人の女から憎まれているの?」  当然の報いだわよ、この悪党。希久美はこころの中ではそう吐き捨てたが、とりあえず瀕死の泰佑を抱き起こす。 「うっ…。」 「きゃー、やめて!」  自分に向かって吐かれては大変と、希久美は起こした泰佑をまた投げ捨てた。泰佑は、またうつ伏せて植栽の下でゲーゲー吐き始める。 「この際だから、全部出しちゃいなさいよ。」  非情にも希久美は、起き上がろうとする泰佑の背中を足で押さえつける。 「いくらなんでも、ひどいんじゃ…うっぷ。」  希久美は腕組みをしながら、泰佑の背中を足で押さえ続けた。いい加減吐きつくした頃、ようやく足をどけて泰佑を抱き起こす。 「いやだ、なんて匂いなの!」  泰佑の汚物にまみれた上着をなんとか脱がせると、公園のごみ箱から拝借してきたコンビニのビニール袋に丸めこみ、片腕を背負って立ちあがらせる。 「重たいわね…。うちどこ?」 「南阿佐ヶ谷…。」 「仕方ないわね。手間のかかるやつだよ、お前は。」
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