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「はーい。そのとーりですねー。」
「美貌はともかく。」
ナミがふたりの会話に割り込んできた。
「確かにオキクは、昔から準備や調査にマメな方だったから、それが仕事に活きたのよ。」
「仕事でもなんでも、次に何が起こるかわからないと不安になるの。ナミもそうじゃない?」
「オキクほど神経質に不安にはならないけどね。」
「そう言えば、ナミから聞いたわよ、オキク。半年つき合っていた彼と別れたんだって?」
「まあね…。」
「まったく…。男たちを翻弄した揚句、見事に捨て去る『おあずけオキク』の本領発揮ね」
「そんなことないわよ…。」
「この魔性も、もともとの素質だったわけ?」
「テレサはどうなのよ。」
顔を膨らませて希久美はテレサに言い返した。
「ファッション雑誌の編集チーフの座を利用して、食べたい放題じゃない。」
「まるで、今日のバイキングね。」
希久美とナミがハイタッチしながら笑い合った。
「うるさい、黙れ。」
テレサはテーブルナプキンで口元を拭きながら、すました顔で言い返す。
「ああ…、毎晩ラブレターを書いていたあの純朴な女子高生オキクは、いったいどこへ行ってしまったんでしょうね…。」
ナミがテーブルの下でテレサの足を蹴った。ナミもテレサも当然、希久美の女子高時代のあの残酷な日を知っており、その日を思い出すような話題は今でもタブーになっていた。自分達がその日の遠因となった責任を少なからず感じていたのだ。ナミが慌てて話題を変えた。
「私なんか、小児科医なんかになってしまったから、親とこどもばっかりで、独身男が寄りつきもしない。」
「確かにねー。」
希久美とテレサが憐れむように声を揃えて同意した。
「それに男を漁りに行く暇もないしね。ねえ、オキク。広告業界って結構いい男が多いんでしょう。誰か紹介してくれない?」
「この業界の男は勧められないわね。派手好きだし、見栄っ張りだし、口がうまいし。とにかく誠実さがないわ。」
「確かにナミのテイストに合うような男はいないかもね。」
「そう…。ああぁ、オキクのお義父さんみたいな人と見合いでもするかなぁ。」
「私も乗った!」
「ばかいわないでよ。年違いすぎでしょ…。」
希久美は、今夜珍しくお義父さんに食事誘われていることを思い出した。今評判の創作和食の店らしい。『あとでチェックしておこう。』希久美は常に準備を怠らない出来る女なのだ。
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