オキクの復讐

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「あら、答えないつもりね。でも黙っても無駄よ。あたしの霊感が強いのは知ってるでしょう。ちょっとあんたの守護霊に聞いてみるわ…。」 「ち、ちょっと、怖いこと言わないでよ。」  ナミはそう言うと、そっぽを向いてグラスを煽る。テレサは眉間に軽く握ったこぶしを添え、何かを感じようと目を閉じていたが、やがて納得したように眼を開けた。 「ヒロパパでしょ。」 「な、なに言ってんのよ。やめてよ。」 「あんたの守護霊がはっきりそう言ったもの。図星でしょ。」  テレサの突っ込みに追い込まれたナミは、ワインの力を借りて逆切れをおこす。 「そうよ、だから何?悪い?」  テレサは、先日会った石嶋を思い出していた。ナミが惚れるのも無理がない。でも、今この席に希久美がいなくてよかった。ヒロパパの見合い相手が誰かわかったら、大混乱になっていたに違いない。 「ユカちゃんとヒロパパは私を先生って呼ぶのよ。名前で呼んでくれたことなんか一度もないわ。あっちはわたしを生身の女だとは見てないのよ。」 「好きだって言って、あなたもエントリーすればいいじゃない。」 「だめよ。向こうにはつきあっている女がいるみたいだから…。」  もちろん、テレサはその女が希久美であると言いだすことができない。 「夢でもいいから、『おまえ』なんて甘く呼ばれてみたい…。」  そう言いながらナミは、いつの間にか酔ってテーブルの上でだらしなく潰れてしまった。テレサは潰れたナミの髪を優しく撫ぜながら、高校時代はもっとクールだったはずのナミを憐れに見つめた。 「オキク。あんたには悪いけど、可愛そうなナミに夢を見させてあげて。たった一日でいいから…。」  テレサは、ナミの携帯をバッグから取り出すと、ナミになりすまして石嶋にメールを打った。
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