オキクの復讐

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選ぶと、石嶋に投げる。石嶋がキャッチしてユカに渡す。ユカはそれをきれいにカートの中に並べる。大きなスーパーの袋をぶら下げて家に帰れば、ナミはユカとシャワーへ。ユカは身体を洗ってもらいながらも、決して大きいとは言えないナミの胸に、多大な関心を示していた。その間石嶋はお米をといで炊飯器のスイッチを入れる。シャワーから上がったユカは、鏡の前でまた顔を整えるナミを不思議そうに見ている。大人は一日に何回鏡を見れば気が済むのだろうと、ユカの顔に書いてあった。ナミは石嶋から借りた義姉の部屋着とエプロンを身にまとい、朝ご飯の準備に取り掛かかる。ナミの姿を真似てゴムで髪を後ろにまとめたユカが、キッチンで料理の準備を手伝う。  シャワーから上がってリビングで新聞を読む石嶋にナミが声を掛ける。 「ヨボー、ご飯ができたわよー。」 「うわー、朝から豪華だなぁ。」  喜ぶ石嶋に、ナミがご飯をよそう。ユカがお盆の上に載せたご飯椀を石嶋に運ぶ。石嶋はユカとナミのおしゃべりを聞きながらご飯を食べた。食べ終えた石嶋をリビングに追いやると、後かたずけもナミが引き受けてキッチンで立ち働く。石嶋はお客さんに台所仕事をさせて、申し訳ないと言いながらリビングのソファーに腰掛けていたが、やがて休日の親父の常で、うたた寝を始めてしまった。ナミはソファーで寝ているヒロパパに、毛布を掛けてあげるようにユカにお願いすると、食器の後片付けだけでなく洗濯、掃除を積極的にこなした。時が経ち、やがて眼を覚ました石嶋がリビングからキッチンへ顔を出した。まだナミとユカがキッチンで立ち働いている。 「何しているんですか?ヨボ。」 「もうすぐお昼御飯ができるわよ。テーブル片付けて。」 「えっ、もう昼ごはん?」  誰もナミに帰れとは言わなかった。ナミも帰るとは言わなかった。昼食後もリビングでゴロゴロしながら過ごす3人。何をするわけではない。ただ3人で過ごしているのだ。ナミが動けばユカがついてくる。リビングに戻れば石嶋がそこに居る。ひとりで好きにやれない不自由さはあっても、ひとりになる寂しさが無い。 「ヨボ、晩御飯何する?」  ソファーで本を読みながら、石嶋がナミに声を掛ける。
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